パーキンソン病とは
パーキンソン病とは?
比較的遅い手足のふるえ(1秒間に数回程度)、動きが遅くなる、筋肉がこわばる、転倒しやすくなる、このような症状が主に50歳以上で起こってくる病気です。
また、上記の症状以外に便秘、頻尿、尿失禁、突然の眠気、悪夢や幻覚、立ちくらみ、意識消失発作、匂いがわからなくなる、など、色々な症状をきたします。
まれに40歳以下で起こることもあり、この場合は若年性パーキンソン病と呼ばれます。
若くして発症した場合は遺伝的な原因の可能性もありますが、ほとんどの場合遺伝はしないと考えられています。
原因としてαシヌクレインというゴミみたいな物質が脳の中のドパミン神経細胞というところに溜まっていき、この神経の働きが弱くなり最終的には数が減っていくことで起こることまでは分かってきました。ですが、なぜこのようなゴミが溜まるのか、その理由までは分かっていません。また稀ですが、これ以外のゴミが原因でパーキンソン病を発症することも最近分かってきています。
パーキンソン病の増加と治療の現状
アルツハイマー病と同じように、以前はそれほどたくさんの患者さんがいるわけではありませんでした。しかし、急激な高齢化とともにパーキンソン病の患者数も大幅に増えてきています。1990年と比べ2015年には患者数は2倍に、そして2040年には更にその2倍に増加することが見込まれており、現在パーキンソン病パンデミックとして危惧されています。
αシヌクレインというゴミが溜まるのを防ぐべく複数の治験薬が検討されましたが、今までのところ目立った効果は出ていないというのが現状です。最近では脳にこのゴミが溜まる前に腸で溜まるということが分かっており、現在この腸でのαシヌクレインをターゲットにした薬による効果が検証されているところです。
パーキンソン病に対しての治療は現在のところ内服(一部貼り薬)、リハビリテーション、脳深部電極刺激療法(DBS)、集束超音波治療(FUS)が存在します。
それぞれ症状の程度や発症してからの年数、内服の副作用などを考慮して最適な治療法を検討していく必要があります。
診断と検査
検査についてですが、一番大切なのは患者さん自身をよく観察することです。ふるえの性状(安静時なのか、動いているときなのか、など)、筋肉のこわばり、顔の表情、全体的な動きの悪さ、このような情報からパーキンソン病なのかそれ以外の病気なのか判断することがある程度可能です。ですが、中にはパーキンソン病とよく似た別の病気(脳血管性パーキンソニズム、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、多系統萎縮症、正常圧水頭症、レビー小体型認知症、薬剤性パーキンソニズムなど)のこともあるため、基本的には頭のMRIに加えDATシンチと呼ばれる核医学検査も行うことが多いです。診察で得られた所見や病歴、MRIやDATシンチなどの画像検査を総合的に判斷してパーキンソン病の診断を下すことになります。
また、どうしても判斷がつかない場合は実際に治療薬を内服してもらい、その効果をチェックすることもあります(診断的治療と言います)。
きちんと診断がついた場合、症状の重さによっては難病指定を受けてもらうことになります。細かいことは割愛しますが、自宅内ではなんとか生活は自立しているものの、転倒しやすく通院や外出などでは付き添いや見守りが必要な程度であれば難病指定を受けることが可能です。その場合、所得にもよりますが、医療費は毎月一定の金額までの自己負担で済むようになります。症状が軽い場合は指定を受けられない、もしくは受けても意味がない場合もありますが、一度は医療ソーシャルワーカーなどにご相談されることをお勧めします。
治療と生活の工夫
パーキンソン病は現在根本的な治療はありませんが、前述したように内服、リハビリテーションをしっかりと行い、必要に応じて脳深部電極刺激療法や集束超音波治療を受けることで健康的な生活が可能な時間を伸ばすことが可能になっています。
また、規則正しい生活、良質な睡眠は病状の進行を遅らせる上で極めて重要です。
できる限り積極的に散歩などの運動を行い、必要に応じて通所リハビリテーション、訪問リハビリテーションなどを取り入れると良いでしょう。また、パーキンソン病の患者さんは不眠に悩まされることも多いです。日中しっかりと運動をし、それでもなお不眠の症状があるようであれば、主治医と相談の上安全性の高い睡眠剤などを処方してもらうのも検討してください。
また、ある程度病気が進行してくると食べ物や飲み物でむせることが多くなってきます。
放置していると誤嚥性肺炎という命を脅かす事態になることもありますので、必要に応じて嚥下機能検査を行い、言語聴覚士などのもとで嚥下リハビリテーションを行うことも検討しましょう。さらに、とろみを付ける、食形態を変えるなどの対策も早めに取っておくほうが良いでしょう。ある程度は内服薬(一部の降圧剤、シンメトレルなど)で咳反射を誘発して誤嚥性肺炎を予防することも可能ですので、少しでもリスクがあるようでしたら、早めに主治医と相談して対策を立てることをお勧めします。