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群発頭痛

群発頭痛とは

どちらか片方だけの眼や眼の周り、前頭部、側頭部にかけて急に強い痛みを生じさせる頭痛を群発頭痛と言います。群発とは一時的に何度も繰り返すという意味です。以前は一側性の頭痛、1日1回、持続時間は約1時間、1年のうち1ヶ月程度続く(群発する)というのが特徴的とされていました。現在では一側性の頭痛に伴って、眼が充血する、まぶたが腫れる、涙が出る、鼻水が出る、などの特徴が診断にはより重要視されています。片頭痛とは違い、痛みが出ている間は落ち着きがなくどちらかというと興奮気味でうろうろしたりするのも特徴的です。
また、片頭痛は女性に多く群発頭痛は男性に多いと以前は言われていましたが、最近では女性の群発頭痛もかなり多いのではないかと考えられるようになっています。
片頭痛同様、20~30代と比較的若年者に多いのも特徴的です。
群発頭痛は分類としては三叉神経・自律神経性頭痛(TACs)の中に含まれており、国際頭痛分類第3版での診断基準は次の通りです。

  1. B~D を満たす発作が5 回以上ある
  2. (未治療の場合に)重度~きわめて重度の一側の痛みが眼窩部、眼窩上部または側頭部のいずれか1つ以上の部位に、15~180 分間持続する
  3.  以下の1項目以上を認める
    1. 頭痛と同側に少なくとも以下の症状あるいは徴候の1項目を伴う
      a) 結膜充血または流涙(あるいはその両方)
      b) 鼻閉または鼻漏(あるいはその両方)
      c) 眼瞼浮腫
      d) 前頭部および顔面の発汗
      e) 縮瞳または眼瞼下垂(あるいはその両方)
    2. 落ち着きのない、あるいは興奮した様子
  4. 発作の頻度は1回/2日~8回/日である
  5. ほかに最適なICHD-3の診断がない

群発頭痛の原因

群発頭痛の原因はまだ完全に理解されていません。ただ、目の奥を走行している内頚動脈という太い血管が拡張し、その周囲の神経を必要以上に刺激することで強い痛みや涙、鼻水などの症状を引き起こすのでは?との説が現在一番有力視されています。その他、身体の日内変動を司る視床下部に異常が生じ、メラトニンやオレキシンという神経ホルモンのバランスが崩れることにより最終的に痛みの発作をもたらす説、片頭痛と同様CGRPによる三叉神経血管系の活性化が関与しているという説(実際にアメリカではCGRP抗体であるガルカネズマブが治療薬として認可を受けています)など、色々な説が提唱されてはいますが、確実というレベルには達していないのが現状です。ただし、遺伝的な要素、環境的な要素が関係していることは間違いないでしょう。

群発頭痛の治療

発作時

イミグランキット皮下注3mg

群発頭痛発作時の治療薬として一番推奨されています。投与後10分ほどで効果が出てきます。おおよそ4人中3人が30分ほどで痛みは消失します。6mg投与ではほぼすべてで改善効果が認められるというデータもあります。このように効果はすごく高い一方、自己注射の方法を習得する必要があったり、針の管理が煩雑など、導入にはややハードルが高いのも事実です。

イミグラン点鼻薬20

注射と比べ効果はやや劣るものの、ある程度の効果は期待できます。しかし、日本では明らかなエビデンスが確立されていないという理由で保険適用外での使用となります。

ゾルミトリプタン内服

内服薬の中ではゾルミトリプタンの有効性が高いことは報告されているものの、日本では保険適応外となっています。皮下注射や点鼻薬、次に説明する高濃度酸素吸入と比べて簡便であることが一番の利点です。

高濃度酸素吸入

フェイスマスク7L/分流量で15分間酸素吸入が有効とされています。おおよそ8割で頭痛改善効果が認められました。また、高流量(12L/分)ではさらなる効果も認められる結果となっています。平成30年には在宅酸素療法が群発頭痛の患者さんに対して認められるようになりました。現在は技術が進歩したお陰で空気中の酸素を濃縮することが可能となり、在宅の機器であってもおおよそ7L/分までの酸素投与は可能となっています。ただし、12L/分という高流量酸素に関しては、メンテナンスや届け出などが必要な液化酸素装置を利用しない限り厳しいというのが現状です。さらに在宅酸素療法を利用する際はタバコなどの火気取り扱いに注意
する必要もあります。(実際に火災による死亡事故も起こっています)

非発作時(予防)

高用量ベラパミル内服

海外では360mg/日での予防効果を示す報告があり、日本でも2011年よりステロイドとの併用で保険適用外使用が認められました。120mg~240mg/日から開始し、効果が得られないときはさらなる増量を試みます。本来は脈拍を抑える薬(120mg~240mg/日)ですので、必要以上に脈拍が低下したり不整脈といった副作用が一番のネックです。また即効性がなく、効果が出るまでにおおよそ2週間ほどかかるため、後述するステロイドと併用することも多いです。

副腎皮質ステロイド内服

なぜステロイドが群発頭痛に対して効果があるのかはっきりとは分かっていません。ステロイドの作用の一つに炎症を抑える効果というものがあり、それによるものだとする説が一般的ですが、最近では三叉神経血管系活性化の抑制の他に、メラトニン分泌低下の是正による症状の改善効果も考えられるようになってきています。

炭酸リチウム(慢性群発頭痛に対して)

副作用などの問題で高用量ベラパミル内服が不可の患者さんに対して投与を検討します。炭酸リチウムはもともと躁状態の患者さんに対して用いられる薬剤であり、こちらもいろいろな副作用の問題があるため使用の際は慎重に適応を検討する必要があります。慢性群発頭痛に対して、おおよそ40%に効果があるという結果報告があります。

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