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本態性振戦

本態性振戦とは

字を書くとき手が震える、声が震える、緊張すると震えがひどくなるなどの症状がある場合、本態性振戦の可能性があります。40歳以上のおよそ6%にこの症状があると言われ、決して珍しい病気ではありません。パーキンソン病とは違い、なにか動作をしようとした際に震えが出現することが多いです。じっとしているときには震えは目立ちません。(パーキンソン病では安静時の振戦が特徴的です。)また、パーキンソン病よりも震えは小刻みで速いことも特徴の一つです。

本態性振戦の原因

自律神経には交感神経と副交感神経の2種類がありますが、このうち交感神経が過剰に働くことによって震えが出現すると考えられています。誰しもすごく緊張したり恐怖に怯えたりすると体の震えを自覚しますが、これは交感神経が過剰に働くことによってもたらされます。本態性振戦は体質的にこのような状態になりやすいと考えられており、病気というよりも体質の問題に近いとも言えます。

区別すべき他の疾患

震えをきたす疾患としては、パーキンソン病、脳卒中(脳梗塞や脳出血)、甲状腺機能亢進症、アルコール依存症、てんかんなどが挙げられます。これらは診察や採血、頭部MRIの検査をすればおおよそ判断がつきますので、震えの症状がある場合、一度は専門外来の受診をおすすめします。

薬物治療

震え以外の症状を来すことは本態性振戦の場合ありません。ですので、日常生活に支障が無ければ薬物治療を行わないというのも選択肢の一つです。早めに治療をすることで進行を抑制するというデータもありませんし、そもそも症状がどんどん進むといったことも稀です。ですが、周囲を気にして知らず知らずのうちに外出の頻度が減ってしまったり、生活の質が低下しているようでしたら薬物治療をまずはお勧めします。治療薬としては交感神経の活動を抑えるβ遮断薬というタイプの薬剤があります。服薬後1時間ほどで効果が現れ、およそ半日持続します。震えがいつも気になる場合は朝と夕に毎日2回内服するのが一般的です。人と合うなど外出時の際のみ頓服で服薬するといった方法もあります。
副作用としては、交感神経を抑えてしまうことによる徐脈(脈が遅くなる)や低血圧、気管を収縮させてしまうことによる喘息などがあります。喘息のある患者さんには利用することができない薬剤です。β遮断薬の効果が乏しい、もしくは副作用などで使用できない場合は保険適応外の使用にはなってしまいますが、抗不安薬や抗てんかん薬を用いることもあります。

薬物以外の治療法

深部電極刺激術

頭蓋骨に小さな穴を開け、刺激用の電極を脳に埋め込みます。胸の前にペースメーカーのような刺激装置を埋め込みリード線を用いて電極とつなぎます。左右同時に手術をすることも可能です。刺激条件を手術の後に変更することが可能ですので、症状の変化に合わせて対応していくことも可能です。日本では2000年から保険適応となっている治療法です。デメリットとしては、手術が必要なので、麻酔のリスク、感染のリスク、出血のリスクなどが挙げられます。また、機械を埋め込むことになりますので、MRI検査を受けることができなくなります。(現在ではMRI対応の機器もありますが、手術を行った施設でないと受けられないなど、いろいろ制限があります。)

MRガイド下集束超音波治療(FUS)

脳の深部にある視床と呼ばれる部分を超音波を用いて加熱し、熱凝固をおこすことで破壊する治療方法です。皮膚切開や骨に穴を開けることもなく、上記の深部電極刺激術に比べはるかに負担が少なくてすみます。デメリットとしては、超音波を通しやすくするため頭をすべて剃る必要があること、頭蓋骨の条件が悪いとそもそも治療が受けられないという点があります。こちらは2019年から保険適応が始まっています。副作用の問題などもあり、現時点では左右どちらか片方のみしか治療を受けることはできません。

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