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パーキンソン病と便秘

パーキンソン病の症状である便秘

パーキンソン病の患者さんは便秘になる可能性が極めて高いことが知られています。 便秘といえば若い女性に多い印象がありますが、もともと年を取ると男女関係なく便秘の割合は高まっていきます。さらにパーキンソン病となると、その割合は一気に高まり、文献では8割~9割との報告もあります。 実際、私が診た患者さんもほぼ全員便秘の訴えがありました。(こちらから敢えて聞き出したということもあるかもしれません)

パーキンソン病の患者さんはα―シヌクレインというゴミみたいなものが体中の神経に溜まっていきます。腸にも神経があり、その神経によってウンチを肛門に送り出す命令を出しているのですが、このα―シヌクレインというゴミが溜まってしまうと命令がうまく伝わらず、ウンチが腸の中に長くとどまってしまいます。それによって便秘になると現在考えられています。

便秘対策と治療

私の場合、内服加療ももちろん行いますが、まずは適切な運動、正しい食事内容に加え、「の」の字マッサージなどをお勧めしています。 それでも便秘が改善しない患者さんには、まずは酸化マグネシウム製剤や乳酸菌製剤など、副作用が少なく使いやすい内服薬を使用します。また、漢方薬に大建中湯というものがありますが、これも効果が出る場合もあります。 このような薬剤でもまだ改善しない場合、アミティーザやリンゼス、グーフィスなど比較的新しい薬を試すこともあります。 それでも厳しいときは、副作用も強くなりますがセンノシドやラキソベロンといった腸管の刺激剤、最終的にはグリセリン浣腸なども処方することもあります。

いずれにしても、パーキンソン病の患者さんは便秘とは切っても切れない関係になっています。たかが便秘、されど便秘です。お困りの方は是非主治医の先生にしっかりと症状をお伝えして、上記のような対策を検討してもらうようにしましょう。

主な便秘薬とその使用感

下に、主な便秘薬とその使用感を述べておきます。(あくまで個人的な感想です)

酸化マグネシウム ある程度の効果は期待できる。高齢になると極稀に高マグネシウム血症の副作用が出現する場合もある。むやみに増量することはしない。
乳酸菌製剤 効果も低いが副作用もほとんどなく使用しやすい印象。最近は使用頻度減ってきた。
大建中湯 効く人は効くといった印象。下剤としての効果が強い大黄(センノシド類)が入っていないので当然といえば当然。体力が無い人、痩せている人などには使いやすい印象。
麻子仁丸 下剤の漢方薬だが、大建中湯とは配合生薬が全く違う。特に大黄が入っており腹痛、下痢などの副作用も出やすい印象。パーキンソン病の患者さんは概して痩せている人が多く、適応となることは少ない。
アミティーザ 効果はまあまあ実感している。副作用として吐き気や胃部不快感、食欲不振などがあり、そのような場合は使用を断念せざるを得ないことも。
リンゼス 効果はまあまあ。食後に飲むと下痢になりやすいのが難点。しかしながら、他の薬剤と比べ腹痛や嘔気などの副作用は少ない印象。きちんと用法が守れる患者さんには使いやすい薬。
グーフィス アミティーザやリンゼスのような、腸管での水分分泌を促すことで便を柔らかくする作用に加え、腸の運動も活発にするということで便秘改善効果が期待されたが、実際はそこまで実感はしていない。他の薬剤で効果不十分な場合に検討する程度。
センノシド 昔から色々な便秘で使用してきた薬剤。特に入院患者の頓服指示では常用されている。腸の中の細菌によってセンノシドが分解され有効成分であるレインアンスロンに変わらないと効果がでないので、8時間ぐらい前に内服する必要がある。
大体朝排便効果を期待するので、夜寝る前に飲むことが多い。
硬いウンチを柔らかくする効果は無いので、もともと硬い便で便秘となっている場合は釣り思いをさせるだけのこともあり注意が必要。
ピコスルファート
ナトリウム
これも昔から利用されている薬。水に溶かして飲むというやや変わった内服方法。錠剤ではないので、逆に飲みやすいといったメリットも。
量の調整が容易なので、それぞれに応じて使用することが出来る。(3滴~15滴ぐらい)
効果が出るまでに8時間ほどはかかるので、センノシドと同様に夜飲むのが効果的。
この薬も硬いウンチを柔らかくする効果は無いので注意が必要。
グリセリン浣腸 何と言っても便秘の最終手段。内服ではいろいろ副作用があるので、結局ほぼ浣腸に頼らざるを得ないケースもままあるのは事実。
摘便 本当の意味での最終手段。救急外来では摘便処置はさほど珍しくない。いつもやってもらっている看護師さんには頭が下がる思いです。
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