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不眠症

不眠症に悩まされる人は大変多く、10人に3人以上の人が何らかのトラブル(寝付きが悪い、途中で目が覚める、しっかり寝た感じがしないなど)を持っていると言われています。

慢性化すると眠気やだるさ、集中できない、やる気がでない、不安にかられるなど日常生活にも悪影響を及ぼすようになり、生活の質が低下してしまいます。その結果、長期欠勤、医療費の増大、労働生産性の低下、産業事故の増加など社会経済的損失をもたらし、公衆衛生上も大きな問題になっています。このような理由から、睡眠に対して正しい知識と適切な治療を選択することは個人のみならず社会に対しても大変重要であると考えています。

治療法

不眠に対しての治療法は、薬物療法と非薬物療法に分かれます。まずは薬を使わない非薬物療法について述べていきたいと思います。

非薬物療法

定期的な運動

適切な有酸素運動が効果的と言われています。就寝前に強い負荷をかけた運動はむしろ逆効果となることもありますので、できれば日中にゆっくりとした運動、例えば散歩などを最低30分程度は心がけるようにしてください。

寝室環境

光に対しては遮光カーテンを用いるなどをして照度を適切に保つことを検討してください。逆に、朝目が覚めたらしっかり日光を浴びるようにしましょう。

カフェインは避ける

コーヒーなどカフェインの入った飲み物は、就寝前はなるべく避けましょう。できれば4時間前からは摂取しないようにしてください。

タバコは避ける

寝る前のタバコも睡眠には良くないと言われています。できれば就寝1時間前からは喫煙しないようにしてください。

過度な飲酒は避ける

よく寝るためにアルコールを摂取される方がいますが、全くの逆効果です。アルコールは眠気こそ催しますが、睡眠の質が低下することがわかっています。少なくとも深酒は睡眠の大敵であると考えておいてください。

リラックス

寝る前にはぬるめの入浴や読書などでリラックスできる環境を整えましょう。軽いストレッチ運動なども効果的です。

規則正しい生活

毎朝定期的に起きるように心がけてください。休みの日も同じです。寝溜めはできないと考えておいてください。

3度の食事

朝食はしっかり取るように心がけましょう。夜食を取る場合はなるべく軽めにしておきましょう。

睡眠時間のこだわりは無くす

人によって適切な睡眠時間はまちまちです。赤ん坊は14時間以上寝ます。生後1歳で12時間ぐらいです。小学生でも10時間ぐらい寝ます。年齢を重ねるとともに必要な睡眠時間は減ると考えて良いです。ご高齢の方であれば、1日6時間程度でも平気な方がたくさんいます。一方でご高齢の方でも昼寝もするし毎日8時間ぐらい熟睡される方もいます。

本当に人それぞれだと思います。8時間睡眠にこだわる方がたくさんいらっしゃいますが、全く無視して頂いて結構かと思います。

昼寝は構わない

昼寝をしてはならないというわけではありませんが、あまり遅い時間の昼寝(夕寝?)は夜の睡眠に悪影響です。できれば昼寝は15時まで、30分程度に留めておきましょう。

眠くなければ起きていても構わない

眠くなるまで布団には入らずにいましょう。ストレッチをしたり、読書をしたり、自然に眠気が起きるまでリラックスした時間を過ごしたほうが効果的です。

薬物療法

次に薬物療法について述べていきたいと思います。

Efficacy and tolerability of pharmacological treatments for insomnia in adults: A systematic review and network meta-analysis
Sleep Med Rev. 2023 Apr:68:101746. doi: 10.1016/j.smrv.2023.101746. Epub 2023 Jan 14.より引用し作成

こちらの表は最近発表された論文からの引用になります。

睡眠薬の選択では主に寝付きが悪いことが問題なのか(入眠障害)、途中で目が覚めてしまうことが問題なのか(中途覚醒)、さらには副作用(ふらつき、日中の眠気、転倒など)のリスクなどを勘案する必要があります。最近ではベルソムラ、デエビゴという依存性や副作用が出にくいとされている新しいタイプの睡眠薬が登場し、使い勝手が良くなってきています。ですが、やはり効果の面ではマイスリーやアモバン、ルネスタといった薬剤もまだまだ人気が高く、これでないと寝れないという患者さんが多いのも事実です。

この内マイスリーとアモバンは30日までの処方日数制限という縛りがあり(国が依存性の問題や過量服薬リスクなどから制限しています)、やや使いにくい印象があります。その点、ルネスタはそのような制限は無く使い勝手は良いのですが、やはり人気はマイスリーやアモバンに軍配が上がっているのが実情です。

救急外来をやっていると、高齢者の原因不明の意識障害のうち2,3割程度はこの睡眠薬の効きすぎによるものが原因という実感があります。普段は特に問題なく毎日寝る前に内服していても、ちょっと体調が悪かったり、そもそも加齢による肝臓の機能低下などが原因で朝から目覚めないとか、朝食後意識が悪くなってしまったなどの訴えで救急搬送されてくることをしばしば経験します。その場合、やはり古くからあるタイプの眠剤が原因であることが多い印象です。そういったことから、新規に睡眠薬を処方する場合、は極力ベルソムラやデエビゴから処方するようにしています。

あと、ここの表には載っていませんが、幻覚を見たり急に大声を挙げたりすることで熟睡できないタイプの不眠もしばしば経験します。特にレビー小体型認知症、パーキンソン病の患者さんによく見られます。その場合は通常の睡眠薬以外に、クエチアピンなどの向精神薬や抑肝散、抑肝散加陳皮半夏といった漢方薬を優先的に処方することも多いです。

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