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前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症とは

前頭葉や側頭葉が目立って萎縮することからこの名前がついています。実際にMRIやCTを撮影すると両側の前頭葉が丸みを帯びた形から先細りの尖ったような形(ナイフ刃様萎縮)に変わっていることが多いです。アルツハイマー病の場合は側頭葉内側の海馬と呼ばれる部分から萎縮が始まりますので、画像検査だけでもある程度両者の区別をすることが可能です。比較的若い年齢(50代、60代)から発症することが多いです。日本人の場合海外と比べ家族歴を有する方は少なく、およそ5%程度と考えられています。2015年から指定難病に認定されており、公的支援を活用しながらできる限り日常生活を維持できるよう務めることが大切です。

症状

急に怒ったり暴力を振るったり、時には悪ふざけをしたり社会性が低下してしまうことが一番の症状です。中には万引きなどを繰り返すなど、犯罪行為が目立つこともあります。自己中心的な考えになり、相手の立場に立って物事を考えられなくなる場合もあります。

また、自分の病状をきちんと理解できず指示された通りの服薬をしない、通院がきちんとできないなど治療継続が困難となることも多いです。常同行動といって、繰り返しの行動パターンが目立つようにもなります。日常生活の中で決まった時間に決まった行動(散歩など)をひたすら繰り返します。病状が進行すると会話自体が成立しづらくなってきます。何を聞いても同じことを返答したり、相手の言ったことを同じように繰り返すだけになったりします。さらに病状が進むと自発性の低下も認めるようになり、明らかな麻痺がないにも関わらず最終的には寝たきりの状態となってしまします。アルツハイマー病と比べ、病気の進行に伴い、比較的早い段階から運動障害(動きが緩慢になる、転倒しやすくなる、筋力が低下するなど)が出現するのも特徴の一つです。

原因

タウ蛋白もしくはTDP-43という蛋白がリン酸化され過剰に蓄積されることによって発症するということが判明しています。なぜこのような物質が蓄積されるのか、その原因まではわかっていません。

診断

詳細な問診が最も重要となります。本人以外にも、家族や友人など、周囲の人からの聴取も非常に重要です。見当識障害や記憶力障害に加え、社会性の欠如が目立つかどうかを見極めるのがとても大切です。次にMRIによって脳の状態を調べます。脳梗塞や脳出血などの疾患の除外はもちろん、アルツハイマー病などに代表される他の変性疾患の可能性も検討します。診断がつきにくい場合は脳の血流を調べるためSPECTやPETという検査を行うこともあります。前頭側頭型認知症の場合、前頭葉の血流低下が目立ちます。当院ではMRI検査を施行しても診断に迷った場合、近隣医療機関にてさらにSPECTを実施しできる限り正確な診断ができるよう心がけています。

治療

残念ながら、現在のところ前頭側頭型認知症に対する治療は確立されていません。
アルツハイマー病に対する治療薬としてドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチンがありますが、いずれも明らかな効果があったという明確な報告はありません。メマンチンに関しては一定程度効果があったという報告もあります。しかしながらいずれの薬剤も保険適応はありません。

周辺症状(興奮、衝動的行動、食行動異常など)に対する薬物治療としては、抗てんかん薬(バルプロ酸、カルバマゼピン、トピラマートなど)や非定型抗精神病薬(クエチアピン、リスペリドンなど)、常同行動に対する薬物治療としてはSSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)などを用いることが多いです。筋肉のこわばりや動作緩慢などのパーキンソン症状が見られる場合にはL-dopa製剤やドパミンアゴニストを用いることもありますが、いずれも純粋なパーキンソン病に比べて効果が乏しいことも多く、また副作用が出現する可能性も高いため、使い方にはより慎重さが求められます。

周囲の方の心構え

他の認知症に比べ前頭側頭型認知症は問題行動が目立つことも多く、周囲の人々の負担が大きいことが特徴的です。性格が大きく変化してしまうことも多く、悩まれるご家族が多いのも事実です。性格変化は病気のせいであるという事を、まずは周りの人がしっかり理解することで悩みの軽減に繋がります。また常同行動が特徴的であるため、アルツハイマー病では徘徊でも、前頭側頭型認知症ではきまったルートを決まった時間に歩くため道に迷うリスクはほとんど有りません。交通事故などの危険性が乏しい場合は特に見守りが必要というわけでもなく、むしろ本人の好きにさせておくほうが衝動的行動の出現リスクを下げることになります。病状が軽い段階から、積極的にデイサービスなどを利用することも大切です。早期から同じ曜日、同じ時間に入浴介助などを利用することで常同行動を逆手に取ることが可能となります。ただし、デイサービスのスタッフには、前頭側頭型認知症はアルツハイマー病などの認知症とはかなり特徴が違うという事をしっかり理解してもらい対応してもらう必要があります。

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